「自分の人生」の手触り

女性にとって月に一度やってくる生理が正常なものであることは、とても大きな関心事だと思います。生理そのものが重くて、貧血を起こしたり、お腹の痛みに耐えて憂鬱な思いをする方もいらっしゃるでしょう。私もずいぶんと長いこと、その「女性の身体のリズム」には悩まされていたのです。

今回はそんなお話からスタートです。

女性としての自分に不全感

20代後半、私は度重なる不正出血に悩まされていました。当時、大学卒業後就職して5年が経ち、実家暮らしの弁当持ちだったこともあって貯金はしっかりあったし、有休もちゃんと使える職場だったので、本来は遊びたい放題だったと思うのですが……旅行の計画が立てづらかったのをよく覚えています。

日にちを決めたら決めたで、その日に向かって当てにならない身体のリズムに過敏になる日々。それがまたストレスを呼びこみ、基礎体温のグラフはぐちゃぐちゃ。ちゃんと排卵できていなかったんですよね。

これじゃぁまずいと一念発起し、初めての婦人科受診。多くの女性がご存知の”例の”診察台に初めて乗ってエコーを撮ってもらったり、ホルモンチェックをしたり。

診断結果は多嚢胞性卵巣症候群。エコーで撮った卵巣には卵の影がいっぱい写っていました。本来はひとつの卵子が大きくなって排卵するわけですが、大きくなりきれない卵がいっぱい残ってしまったのです。

当時、私は妊娠を希望していたわけではなかったので、低用量ピルを飲むことでリズムを整えることに。
このころは本当に楽ちんでした。周期が自由自在にコントロールできるのですから、いつどんな予定を立てたってそれに向けて自分で調整すればいいんです。悩みが解決されてすっきりした気持ちでした。

けれど……30歳を過ぎ、そろそろ妊娠出産のリミットも頭をちらつき始める頃、私の身体は妊娠ができるのかどうか気になり、本来の自分の身体のリズムに戻そうとピルをやめることにしたんです。ただやっぱり心配はあったので、ピルをやめる分、漢方薬に頼ることに。

その結果は……基礎体温は二相になる月がほとんどであるものの、ときどきまたも不正出血が起こり明らかに排卵ができていない月もありました……。

おそらく同じように頻繁に女性の身体としてのリズムを崩す経験をお持ちだったら共感していただけると思うのですが、その頃は本当に女性としての自分に少しも自信が持てませんでした。見た目は女性らしく装えたとしても、身体の機能が伴っていないのですから。彼氏と別れて二年程経ったのに、次の出逢いも見つけることもできず、とにかく女性としての自分の不全感が強かったのです。

仕事での充実感と身体の不調

さて、そんな風に身体のリズムが整っていなかったころ、私の日常はどんなだったかというと……
仕事にまい進してました。といっても髪を振り乱してまでやっていたわけではなく……。

システムエンジニアだった私ですが、ユーザーの業務に関する知識も増え、積極的に意見も交わせ、特に当時は非常にフレンドリーなお客様だったので、大変さもありつつ楽しく仕事していました。大規模システムだったこともあり、システム側の人間もとても多かったのですが、コアメンバーは気さくに話せる人が多く、一人ではなくチームとして仕事ができていることが嬉しくもありました。ただまぁ、終電帰りなんてこともよくありましたけど。それでもシステムエンジニアといえば会社で徹夜、なんて話もよくありましたので、それに比べれば恵まれていたと思います。

仕事には充実感を持てていました。けれど身体は不調を訴えていました。

このとき私がどうしたかと言えば……
身体の声に耳を傾けず、ピルという薬に頼り、起こっている症状の解決だけをしたのです。

それ以外の方法なんて頭に浮かんでいなかった。前に書きましたが心と身体がつながっていることを高校生のときに身をもって経験していたにも関わらず。

20代後半で身体も若く仕事をするにも脂の乗った時期であったということもあります。担当している仕事そのものに楽しさを感じてもいたので、自分の生活に疑問を抱いていなかったのですね。

今なら思います。あの当時、もしももっと多くの人が身体の声を聞く大切さを強く訴えかけていてくれたら、もっと頻繁に自分自身に向き合うきっかけをもらっていたなら、私は違う選択をしていたかもしれません。それでも知らんぷりしてしまった可能性もありますけれど。いえ、きっとその可能性のほうが高いでしょう。でもだからこそ、その重要性をいま、私は伝え続けたいと思います。

……話がそれましたね。戻します。

その後、年月が経つにつれて居心地の良かったチームは縮小され、人員が減るのに伴い長く居ついている者には責任が多く被さるようになり、一方で身体は確実に下降を始めていき、現実的なタイムリミットも迫る。そうなって初めて心が悲鳴を上げていることを自覚し、けれど無自覚に進んできた道からはもう逃れられないと感じ、「どうしたらいいんだろう」と途方に暮れてしまいました。

大問題ではない、と思いたかった

心理セラピーは特に30代、40代の方が受けられることが多いですが、きっと私と同じような道を辿っているのではないかと思います。

なんとなく引っかかるものはある。
けれどまだ大した問題にはなっていない。
それを忘れる楽しいこともあれば、体力に任せて振り切ってしまうこともできる。
人生がどこに向かっているか真剣に考えたことはないけれど、きっとみんなと同じような出来事が訪れるに違いない。
山も谷もあるだろうけど、それでもそこまで苦しむことなく生きていけるはずだ……。

そんな風に思っていたのに、気づいたときには何をどう考え、どう動けばいいのか、何一つ分からない状態に陥ってしまう。

そうして「人生ってこんなものなんだ」とどこかで自分を納得させ、歯を食いしばるようにして日々に耐える

そうやって生きている人はきっと多い。そしてそうやって人生を終えていく人も多いことでしょう。

けれど。

本当は「人生ってこんなもの」ではないんです。
特に生きづらさを抱える人の視野は狭く、その限られた視界の中だけで世界を見ている。

それを変化させ、もっと広い視野を持ち、もっとあたたかさを感じる世界で、自分のこれからの道を改めて考えて、そしてその道に歩みを進めてみる。

それは本来、誰にでも出来ることなんです。
その可能性を、私はあなたに、知ってもらいたいと思います。そのために心理セラピーはあるのだと私は思います。

諦めなければ道は開ける

さてさて、最後に今現在の私について書き記しておきましょう。

今はすっかり正常な身体のリズムを取り戻しました♪

結婚しない限りは(結婚したとしても)このままずっと勤め続けるのではないかと思っていた仕事を辞め、心理という自分の興味に従った学びを日々積み重ねることができる自由があります。

もちろん常に結果の出せるセラピストであるためには頑張らなければならないこともありますが、歯を食いしばって、身を固めて、我慢しているわけではありません。

きちんと自分と向き合って、それによって40歳に近づいてもなお、自分自身について新たなことを知る機会も持てています。

そんな日々には紛れもなく私にとっての「自分の人生」の手触りがあります。

今のこの私に辿り着くまで、たくさんの涙も流したし、自分にとって都合の良いように歪めて見ることでやりすごしてきた真実を目の当たりにして、苦しみました。思うように進めない自分にほとほと嫌気が差したときもあります。我慢しさえすれば手に入れられる見せかけの安定にずっとしがみついていればいいじゃないか、と自分を説得しようとしたこともあります。

けれど、たくさんの人に導かれました。惜しみなく生きる力を分け与えてくれた方、セラピーでもって真剣に向き合ってくれた方、時にぶつかり合いながらもお互いに助け合うと決めた仲間。

自分が自分を諦めなかったから、出逢うことができたんです。

あなたにもあなたにとっての「自分の人生」があります。それをあなたの手にしっかり掴み取ることはできます。それは今からでも。決して遅いなんてことはありません。

我慢する日々に初めから諦めないで。
あなたが産まれ持った心と身体に合う生き方は必ずあります。
緩んだ心と身体で生きられる道はあるんです。

だからどうか、今抱えているその悩みをお手軽な方法で誤魔化すのではなく、しっかりと見つめてください。
その先に必ず、あなたが進みたい道が開けるのですから。

どうかあなたも諦めないで。